中高に金子先生という国語の先生がいた
その人から授業中言われた事を思い出していた
中学の後半か高校に上がってすぐの頃で、作品名は忘れたけど、現代文の朗読をしてた時に先生から「お坊さんが読むような読み方だね」という意味の言葉を掛けられた
先生が好きだったので、嫌な気分は全くしなかった。そうでなくとも、昔から人前で朗読をすることでさえ強い緊張を覚える、小心の持ち主だったので、変に硬直した形で背筋が伸びた自分の声や抑揚の付け方をそうやって指摘されたことには、どこか先生がユーモアで先手を打って救ってくれたような優しさすら感じた
こうして過ぎ去った日のことをあれこれ思い出して何事かを主張したいわけでもそこに特別な重みを与えたいわけでもないんだけど、ただ自分の生きてきた暦の内にこういった一瞬が隠されていたことが記憶の闇に埋却されてしまう前に、細やかながらも書き記しておきたいという欲意に動かされた
その人は3年前の夏に死んだ
お墓参りにはまだ行けていない